「別れようや、俺ら。」

ああ、これで終わりなんだ。意外にも私の頭は冷え切っていた。
まぁこんな展開になるのは目に見えてた。だから、かな。
私は貴方に捨てられて、孤独に打ちのめされる運命なのよ、きっと。
周りの友人達が言ってた忠告、守れば良かったかな。
なんて、後悔先に立たず。

「忍足くん?! 止めときなよ、彼って凄い遊び人なんだから!」
「そうだよ、。最後に捨てられて泣くのはなんだよ?」

そうだね。私の最後は確かに捨てられて、だったよ。でもね。
私は泣いてない。何でだろう、心はこんなに悲しんでいるのに。
言葉を吐き捨てて去っていく侑士の広い背中を見ながら、私はその場に崩れ落ちた。
此れで終わりなんだと、はっきり見せ付けられた様な気がして。
侑士の背中が見えなくなるまで見てやろうと思ってたら、横から侑士の腕に絡みつく女が現れた。

「ねぇ侑士ィ、今日は何処に連れて行ってくれるの?」
「そーやな、自分が行きたいトコに連れてったるわ。」
「本当に? じゃあ、青山に行きたいんだけどォ。」
「よっしゃ。任せとき。」

其の女が、侑士の新しい女? 何よ、何よ。
私はこんなに苦しんでいるのに、貴方はさっさと新たな恋?
羨ましい限りね。
何時までもこんな処に座り込んでられない。そう思って私は地面から立ち上がった。
明日から笑えるかな。なんて、今から明日の不安。
でも足は上手く歩いてくれなくて。足は上手く身体を支えてくれなくて。
再び地面に崩れ落ちる、そう思ったけど、地面の感触はまだない。
どうしてだろうと見上げると、どうも見慣れた顔があった。

「・・・・・・大丈夫かよ。」
「あ、跡部君。うん、大丈夫。」

跡部君に礼を言って、私は今度こそ自分の足で立ち上がった。
じゃあね、と言ってその場から立ち去ろうとしたけど、跡部君が不意に私の腕を取った。

「何?」
「忍足と別れたんだろ?」
「うん、そうだよ。侑士ね、新しい彼女が出来たんだって。だから私はもう用済みなんだって。」
「・・・・・・なんで、泣かねぇんだよ。」
「どうしてだろうね。心はこんなに哀しんでいるのに。」

私は今度こそ跡部君の手を振り払って、じゃあね、と言ってその場を去ろうとした。
だけどまた跡部君は私が立ち去るのを許さなかった。
跡部君は私を後ろから抱きしめる。
――――やめてよ。優しくしないでよ。甘えちゃうから。

「我慢するの、止めろよ。俺の前で我慢するのは止めろ。」
「我慢なんてしてない。ただ、泣けないだけ。」
「んな訳ねぇだろ。本当は泣きたいんだろ?」

違うよ。私は本当に泣けないの。
お願い、もうこれ以上優しくしないで。本気で甘えちゃうから。

「なぁ、・・・・・・俺って、そんなに頼りないかよ。あいつよりそんなに頼りないかよ!」
「・・・・・・違う。嬉しいの。こうして傷心している時に、一緒に居てくれて。」

でも、それでも貴方と侑士は違うから。
其の優しさに甘えるわけにはいかないから。
こうして思うと、私は一体どれだけ侑士に未練があるんだろう?
そう思うとちょっと笑えてきた。

「跡部君。私、本当に傷ついてるんだよ? ただ、涙を流さないだけ。」
「? が我慢してるだけだろ。」
「ううん、違う。」

心が、泣いてるから。
ごめんね。本当は泣いて泣いて泣いて。泣き喚いて楽になりたいのに。
それが出来ないのは、きっと――――

「ねぇ、知ってる? 人ってね・・・・・・・・・


恋愛感情冷却期間
(本当に哀しいと 涙が流れないんだって)


(08/08/16)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送