愈々始まった作戦。其れは敵マフィアであるボンゴレファミリーの奇襲作戦。夜半過ぎに館に侵入し、内部よりの攻め落とし。出来たら私は「無血開城」が良いんだけどな。まぁ、そんな事も云ってられないでしょ。敵に情けは無必要。此れ、私が慕うボスの教訓。
 まずは東から攻め落とす。合図は狼煙と云う名の焼き払い。其れを合図に西、その次に中央。そう、正しく私が立っている場所。正面玄関。(不気味な程誰も居ない)(東西が攻められてるのに正面に誰も居ないってどう云う事よ?)
 ボスは私が独りでも大丈夫だと仰って、中央には私しか配置しなかった。(買いかぶりです、ボス)其れともボンゴレが此処に誰も配置していない事を読んだのだろうか?私は西館を見た。火の手が上がっている。(愈々私の出番ね)(嗚呼こんなにも心臓がバクバク云ってる)
 大きすぎる門を押し開け私は館の中に入った。私を出迎えたのはヴァリアーの独りだった。(運が悪い……)(しかもヴァリアーの天才、ベルフェゴールじゃん)
        
「何、キミ独り?」
「……敵に話す事など何も無い。」

 私は愛用武器の二丁銃を取り出しベルフェゴールに向かって撃った。でも、避けられた。いや避けたんじゃなくて斬った。(ほんとどうなってんのよ)(ヴァリアーって化け物の一味なんじゃないでしょうね)

「にしし。俺に武器は通用しないよ。」
「そうみたいね。でもね、私は貴方を倒して先に進まなきゃいけないのよ。」
「俺は倒される訳にはいかないんだけど。」

 会話しながら攻撃する。でもベルフェゴールは避けるだけ。(私、遊ばれてる?)次に撃鉄を起こすと、カチャカチャと空振った音が聞こえる。厭な汗が背を伝った。(もしかして、弾切れ?)

「あれ、もしかして弾切れ?」
「チッ!」

 私は舌打ちして銃を捨てた。ブン…と物騒な音を立ててベルフェゴールに蹴りかかる。(こう見えても私、格闘派だったりするのよ)ベルフェゴールも予想外だったのか避けきれなかった。(おしい!腕をちょっと掠っただけだ)

「吃驚したぁ。」
「油断は禁物ね。」

 そう云うとベルフェゴールはにしし、と笑って武器を取り出した。(やっと本気で戦える訳ね)手に持っているのは何の変哲も無い只のナイフ。(私って更に遊ばれてる?)

「お遊びはこれまで、ね。」
「…………え?」

 ドスッ。(厭な音)私はワンテンポ遅れて自分の躯を見た。(見なかった方が良かったかな)(でも其れは後の祭りって奴ね)綺麗に心臓に刺さってるナイフ。生暖かい自分の血。(やっぱりヴァリアーって化け物みたい)そしてゆっくり倒れていく躯。

「壊れちゃった?」
「……私、死ぬのね。」
「にしし。当たり前じゃん。」

 どうでも良いけど、其の笑い方。癇に障るわ。って云ってやりたかったけど。(どうやら其れは無理みたい)嗚呼逝くんだって思うけど不思議と恐怖は無い。(職業柄?)
 其れでも、最後に……。

「ボス……ごめん、なさい……。」
「なにこの女。最期までボスの事ばっかじゃん。」

 最期くらい俺の事考えてくれたって良いじゃん。って云うベルフェゴールの呟きさえ、聴こえない。 



さァ、懺悔の言葉は決まったかね?
(キミに逢いたくてボスに無理云って此処に配置して貰ったのに)



(08/08/16)
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