イタリアにある、ボンゴレファミリー。
そのアジトにある、ヴァリアーの個人私室で、事件は起きていた。

「ベルフェゴール―――!!」
「・・・お前、また何かやったのかぁ?」
「えー?ちょっとのクローゼット漁っただけだって。」
「しっかり何かしてんじゃねぇかぁ!いい加減にしろよ、俺まで被害被るんだぞぉ!」
「事後処理は得意じゃん、スクアーロ。」

ふざけんなぁ!!
アジトに、スクアーロの叫び声が轟いた。
それと同時に、何者かが全力疾走で走り抜ける音が響く。
スクアーロとベルフェゴールの背中に厭な汗が伝った。

「じゃ、あとは頼んだ!」
「待てぇ!」

スクアーロの必死な引き止めにも応じず、某切り裂き王子は華麗に窓から去っていった。
其の直後に、背後にあった扉が勢いよく開けられる。
よく見れば其の扉は既に廃品回収に出さなければならない程に破壊されていた。
あぁ自分もいつかああなってしまうのだろうか、と脳裏の過ぎる。

「スクアーロ・・・ベル、知らない?」
「あ、あいつならその窓から・・・。」
「本当に?隠してたら吊るすよ?」
「(吊るす?!)本当だ!奴は窓から逃げていったぜぇ!」
「ふーん・・・帰ってきたら殺す。」

物騒な言葉を呟いた彼女の表情は、平然を装っているが、其れはあくまで仮面だ。
本当は心の中でベルフェゴールをどう殺そうかと考えている。
そして、スクアーロはそんなの愚痴に数時間付き合わされる事になる。

「―――クローゼットの鍵が抉じ開けられて、下着が数枚なくなってるのよ!」
「・・・。」
「この前も壊されて、つい先日直したばかりなのに!あぁもう忌々しい!」
「うぉぉい!八つ当たりに俺のテーブル壊すんじゃねぇ!買ったばっかなんだぞぉ!」
「やかましい!」

スクアーロの制止も聞かず、はドゴッドゴッとテーブルを殴りつける。
おかげで新品同様のピカピカだったテーブルは、ボコボコのボロボロだ。
もう見る影もない。
テーブルを潰すなら、の母国である日本に古くから伝わる藁で出来た人形を殴れ。
そう云ってやりたかったが、下手を云うと今度こそ自分はあのテーブルのようになってしまう。
変なところでチキンなスクアーロだった。
やがて最早元がテーブルだったことすら解らなくなった物体を放置し、スクアーロと談話する。
話の内容はもちろん、某切り裂き王子の陰口もとい愚痴だ。

「――――まったくあんたあれどうにかしてよね。なんかストーキングされてんだけど。」
「俺が知るかぁ!本人に云えよ、そういうことは。」
「この前マーモンとっ捕まえたらあたしの写真数枚ポケットから出てきたし。」
「え・・・。」
「拷問したらベルフェゴールから買ったって吐いた。」
「(実は俺も買ったような・・・)そ、そうか・・・。」
「しかもその写真、あたしの着替えシーンまであった!絶対覗きよね!」
「そ、そうだなぁ・・・・。」
「よし、膳は急げ、ね!さっそくザンザスのところ行って許可貰ってくるー!」
「あぁ・・・・って、うぉぉぉい!なんの許可だぁ?!」

スクアーロが振り返って叫ぶが、は既に土煙を巻き上げて豆粒ほどにまで小さくなっていた。
まぁこんな愚痴を毎日のように聞かされているスクアーロには、彼女が何故ザンザスの元へ行ったかは大体わかる。
恐らくレヴィ・ア・タン雷撃隊を利用して大規模なベルフェゴール捕獲作戦を展開する為だろう。
つい最近、それが実行されたばかりだ。
この数時間後、ボンゴレのアジトではベルフェゴールの悲鳴が響き渡るのだろう。
―――俺を盾にした報いだぜぇ。
スクアーロは破壊された扉とテーブルを尻目に、そう呟いた。



哀れな犠牲者

(どうして俺ばっかりなんだぁぁぁ!)



(08/08/16)
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